方法
超高齢社会に求められる予防型地域福祉政策には、全国一律の解はありません。共通のマニュアルを適用すれば済むわけではなく、地域ごとに課題や住民ニーズ、あるいは地域の事業者等のシーズ等は多様であり、それぞれの地域特性に応じた健康まちづくりをデザインしていく必要があります。
厚生労働省は、2025年を目途に「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築」を推進しており、それは「保険者である市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、地域の特性に応じて作り上げていくことが必要」だとしています。ところが、地域包括ケアのの計画づくりを担う地方自治体の政策現場の多くは、これまで検診率の向上や保健会計の管理などの実務的な業務に終始してきました。他地域のモデルをそのまま当てはめるのではなく、自分たちの地域の実情に応じた独自の地域福祉政策として、何を判断材料や評価基準として何をすれば良いのか、困惑している実態があります。
そこで、本研究会では、地域の多様性を鑑み、自治体が地域特性をデータで的確にとらえて、予防効果を発揮できるような地域政策を立案し、エビデンスに基づいて効果を検証しながら政策を進めていくための支援ツールを開発します。具体的には、以下の3つのテーマを統合して、地域特性データの解析とその政策的展開を研究します。
- 高齢者データのまちづくりへの展開
- 健康の地域特性データの「見える化」システムの開発と地域福祉政策への利用
- 地域の医療・介護経済の「見える化」
以上の3つのテーマを総合することによって、地域福祉政策、都市計画、地域経済政策を総合するような健康まちづくり政策を提案します。地方行政能力に応じて、地域ごとに異なる住民健康ニーズに適切に対応する予防型政策デザインへと高度化することが期待されています。
本研究会は、領域横断的な政策課題を解くために、人文・社会科学系、理工学系、医・薬・保健学系にわたる学際的な専門知識を組み合わせた研究チームを組むとともに、地域のアクターと連携した調査や自治体の制作現場における社会実装と同時進行で、「共創」的に研究を進めます。本研究会のフィールドは北陸・石川県の複数の市町村であり、大学と地域の現場とのコミュニケーションを密にして実施します。
本研究会は、学内研究者で構成されています。研究領域は上記の3つのテーマに即して、大きく3つの研究部門(1.高齢者福祉・健康グループ、2.エリアマネジメントグループ、3.医療・介護経済グループ)と4.社会実装部門で編成されています。学際的な研究グループを相互に連携させて研究課題に取り組むと同時に、地域のさまざまなアクターと連携関係を構築し、その協働を通じて政策体系づくりに取り組みます。